2017-05-01から1ヶ月間の記事一覧

青山ひろし35歳の春第5回

「あおやまはん、いてるか?」 「あー土方はんでっか、まいどおおきに」 「おおきに」「また、わざわざうちまで足を運んでくれはって、一体何事でんのん?」 「いやな、あおやまはんにだけはちょっと話しとこ、と思うことがあってな、うちの部長のことなんやけど…

青山ひろし35歳の春第4回

彼は悩んだ、それほど深く悩んだわけではない。ちょっとだけ悩んだというべきである。制限時間内に走りきれる自信はない。かと言って、京都マラソンを走る権利をあの部長に手渡す気にもなれない。やはり自分の足で走ってみたい、という結論に達するのに、そ…

青山ひろし35歳の春第3回

あおやまひろしは毎日例の部長の会社に顔をださねばならない。これは仕事であるから仕方がない。 今日も気が進まないまま、「まいど〜」と会社扉を開けた。できれば、部長とは顔を会わせたくない。部長が抽選に漏れた日から、顔を見るたびに「ねちねち」といや…

「青山ひろし35歳の春」第2回

京都マラソンの抽選発表の時期が来た。そのころには「あおやまひろし」もすっかりランの魅力に取り付かれ、走ることの楽しさを充分感じていた。京都マラソンへの参加を勧めてくれた、あの「上品な広島弁と下品な関西弁(?)を使い分ける部長」に感謝もして…

「あおやまひろし35歳の春」第1回

「あおやまひろし35歳」とは、いかにも京都に住んでいそうな人の名前ではないか。実際彼は京都市中京区に実在する。彼は京都生まれの京都育ちであり、堀○高校卒業後、地元で職人としての道を選んだ。今では、三条商店街の近くに職場を構えて、伝統技能の職…