(続)ミスターせばっしゃん ハズ ゴーン!

ある日彼に・・・「あ〜、ミスター セバッシャン ドゥ ユー ノウ ダッタ・・・」と切り出したのでしたた・・・。

「ミスターせばっしゃん、このお店とゲストハウスが今年の7月20日に閉館となる件を、あなたは知っていますか?」

「あ〜、ミスターイマイ(エコ通Sの理事長)に聞いたよ・・・。でも、理由は聞いてない・・・。閉館しなくちゃならない理由は何なんだ?」

「はい、この建物の老朽化がひどくてね〜・・・。それで、この建物は壊されるんだそうです」

「そ〜か、それは仕方ないな〜・・・。」

「・・・」

「ミスターエコ助、確かにそれは仕方ない・・・。でも、俺はとても寂しいよ・・・。だって、ここはスタッフもみんなフレンドリーだったし、清潔だし、他の宿泊者も、アジア人が多かったが、若い人達が多くて、エチケットをよく守る客ばかりだったし・・・・」

「そ〜ですか・・・。そ〜言っていただくと、とても嬉しいです・・・」

「近所に御所も鴨川も二条城もあり、毎朝のウォーキングに行く場所にも事欠かなったし・・・」

「そうですね〜、あなたは、毎朝歩きに行って、そして僕がディ ジュー エンジョイ ユア ウォーキン?と声をかけると、イエス!サンキュと陽気に応えてくれて・・・」

「そ〜なんだ、そうやって、毎朝、にこにこ挨拶して、ひと声かけてくれる君がいたからこそ、俺はここが好きだったのかもしれないよ・・・」

「ははは、それは嬉しいですが、それは多分かいかぶり過ぎだと思いますよ」

そんな会話をして、昨日、つまりチェックアウトの前日、僕はさらに、彼に確認したのでした・・・。

「あなたは、昨日Nリーダーにチェックアウトは午後1時でよいか?と聞いたらしいですが、Nリーダーから、それは別に構わない、て〜伝言がありましたよ・・・。で、その時、あなたがレンタルしていたロッカーのカギを返して欲しいんですが・・・」

「ミスターエコ助、そのコトなんだが、俺は、このホテルが閉館する夏までに、も〜一度ここに戻って来ようと決めたんだ・・・。多分5月頃になりそ〜だけど・・・。その時まで、ロッカーの契約は継続したいと思うのだがど〜だろ〜?」

「それは、構わないですが、それであなたに不都合はないのですか?」

「確かに、往復したりする経費は増えるけど・・・それ以上に、このホテルは僕にとっては特別な場所だったからね〜・・・。悪いけど、チェックアウト前に、君のデスクに行くから、継続の手続きをしてもらえるか?」

「あ〜、勿論それは歓迎すべきことですよ。僕は12時までのシフトですから、それまでには来られます?」

「あ〜、帰国の準備をして、必ず君のデスクに行くよ」

「はい、わかりました。お待ちしてますよ」

でも、結局彼は、僕のシフト終了の時までに、窓口に姿を見せなかったのでした・・・(-_-;)

午後の引継ぎのスタッフが来たので、「多分、ミスターセバッシャンがチェックアウトの時に、ロッカーの契約の継続の手続きに来ると思いますので、よろしくお願いします」と告げたのでした・・・。

「あ、それと、彼に伝えて欲しいことがあるんですけど・・・。毎朝、4階のフロア(ゲストハウスのフロア)のゴミ箱の回収に行くと、カンパリや、清酒や、酎ハイや、スコッチの瓶があったけど、ちょっと飲み過ぎだと思います・・・と伝えて欲しいんですが」

「それに、あなたが毎晩、お酒を飲みたくなる気持ちはよ〜くわかります・・・。特に離婚したトモ子さんとその息子さんの事を思うと、それは飲みたくもなるだろ〜と思います・・・。だから飲むな、とは言いませんが、少し控えた方がよいのでは・・・」

「それと、あなたは、ウィスキーを飲みながら、ツナ缶をあてにする習慣があるようですね・・・。それはいいのですが、僕はその回収時の臭いに、毎朝苦労しましたよ・・・と、彼に付け加えて伝えて欲しいんですけど・・・」

「エコ助さん、そんな細かい話は、むしろ直接された方がえ〜のでは」
と、その引継ぎスタッフの人に言われたのですが、僕はこ〜応えたのでした・・。

「それはそ〜かも知れませんが、きっと帰国の準備が大変なんだと思います。今回は大量に古着物や古書を仕入れていましたから・・・。」

「で、最後に、さらに彼にこう伝えて欲しいんです。五月にあなたがが帰ってくるまで、どんなことがあっても、僕はこの窓口であなたの事を待っているから、必ず帰って来て下さいね!・・・とね」

「わかりました・・・。」という、引継ぎの人の言葉を聞いて、エコ通Sをアトにしたのでした・・・。

「ホテルの窓口スタッフは、フレンデリーでありながら、いくら気の合うお客様であっても、必ず一線を引いて、ドライかつクールに対応すべきなんだろうな〜・・・。

そ〜ゆ〜意味では、僕は最後までホテル業には向いてなかったのかも知れないな〜。だってお客様に感情移入して、余計なおせっかいまで言ってしまうし・・・」

と、思ったのでした・・・。

翌日、ミスターせばっしゃんがしきりに「ミスターエコ助によろしく伝えてくれ。必ず5月には戻ってくると伝えてくれ」と言いながら、エコ通Sを出ていたことをスタッフの人から聞きました。

エコ通ステーション閉館まで残り5カ月余りとなった、まだ肌寒い春の事でした・・・。